企業法務コラム

サラリーマンに心の病急増中

大企業の社員約1600万人が入る「健康保険組合」では、心の病による受診件数はリーマン・ショックのあった08年度は1千人あたり延べ235件だったが、3年後の11年度は同280件と19%増えている。
厚生労働省がまとめた医療保険の利用状況調査から、働き手本人が心の病で通院や入院した件数をもとに、朝日新聞が推計した。財政難に陥り解散する健保組合が相次ぎ、全体の加入者数は年々減っているため、加入者1千人あたりの受診件数で比較。現在の調査方法になった08年度以降を対象とした。

※引用
2013年8月22日 朝日新聞デジタル
「心の病、サラリーマンの受診2割増 08~11年度、朝日新聞社推計」

(評)
 メンタルヘルスの問題は企業の人事労務関係者にとって、頭の痛い問題になっている。かつて、労災と言うと自動車運転中、工場作業中の事故が多かったが、現在はうつ病等の精神障害による労災申請が増え、むしろこちらの方が大きな問題となっている。23年12月には精神障害の業務起因性について、新しい判断基準が作られ、今後も精神障害を理由とする労災申請は増え続けるだろう。
 メンタルヘルス検査実施を義務化する改正労働安全衛生法案が23年12月に国会に提出され、継続審議となった後、24年国会に再提出。受動喫煙防止策を努力義務とするような修正の動きもありながら、8月には衆議院の厚生労働委員会において提案理由説明が行われ、審議される直前まで行った。しかし、その後内閣不信任やら何やらで混乱が続き、11月衆院が解散されることにより廃案となってしまった。
因みに同法案は次の改正点を含んでいた。

*医師又は保健師による労働者の精神的健康の状況を把握するための検査を行うことを事業者に義務づける。
*検査の結果は、検査を行った医師又は保健師から労働者に直接通知される。
*検査結果を通知された労働者が面接指導を申し出たときは、事業者は医師による面接指導を実施しなければならない。なお、面接指導の申出をしたことを理由に労働者に不利益な取扱をすることはできない。
*事業者は、面接指導の結果、医師の意見を聴き、必要な場合には、作業の転換、労働時間の短縮など、適切な就業上の措置をしなければならない。
厚労省の中でどのような動きになっているか、気になっていたが、13年6月10日の労働政策審議会安全衛生分科会で、宮野安全衛生部長が、「現在、平成25年通常国会には未提出となっています。私どもとしても、この法案については当分科会での議論を踏まえて提出したものですので、再度国会に提出したいと考えております。」と発言しているので、再提出があるのではないか。

法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹

2013年08月27日
法律事務所ホームワン