企業法務コラム

ツイッター投稿で飲食店閉店 問題を起こした従業員にどこまで損害賠償が認められるか?

アルバイトが店内の冷蔵庫に入って自らを撮った写真をツイッターに投稿した事件で、同アルバイトが勤務していたブロンコビリー足立梅島店が休業していたが、8月12日付で、ブロンコビリー本社が、同店舗の閉店を発表した。
以下、会社の発表を引用する

この度「ブロンコビリー足立梅島店(東京都)」に勤務するアルバイト従業員が、店舗内で不適切な行為を行った画像をインターネット上に公開していることが、8月6日に判明いたしました。本件が判明いたしました8月6日より休業し、当該アルバイト従業員を解雇、また徹底した店舗清掃・衛生を通じて従業員の再教育をして再開のための準備をしてまいりました。しかしながら、弊社の企業理念にある「おいしい料理と気持ちよいサービス、清潔で楽しい店づくりを通じて心地よいひとときを提供する」使命と、お取引先様等のご支援をいただきながらこの使命の実現に取り組み続けている全社・全従業員の努力に反した責任は重く、当該店舗がこのまま営業再開することは許されないと判断し、退店を決定いたしました。
お客様及び関係各位に多大なご迷惑をお掛けしましたことを深くお詫び申し上げます。この度の事態が発生いたしましたことをこの一店舗の事象と捉えず、全社の問題として厳粛に受け止めて、教育及び指導を徹底し、全従業員一丸となって信頼回復に努めて参ります。

(評)
馬鹿につける薬はない、と言ってしまえばそれまでだが、真面目に働いていた人間からすれば許し難い行為だろう。
ところで、この会社がこのアルバイトに対して損害賠償を請求したら、次のような損害を取れるだろうか。

1 業者を雇って調理場内を徹底的に消毒清掃した。
2 店内にあった食材を全て廃棄した。
3 休業したことにより、本来得られるべき利益が得られなかった。
4 店を閉店した。

これは、因果関係の問題である。「風が吹けば桶屋が儲かる」という言葉を知っているだろうか。「風が吹く→砂塵が起こり失明する人が出る→失明した人が三味線弾きで生計を立てることになる→三味線には猫の皮が使われるため、町から猫が少なくなる→猫が少なくなると、ネズミが増える→ネズミが増えると桶がネズミに齧られる被害が増える→多くの桶が使えなくなり桶屋が儲かる。」というのがその理由。
しかし、このように因果関係というのはたどればたどるほど、きりがない。そのため、ある事故による損害が、予想外のところまで広がっていく可能性がある。
そうした予想外の損害について、法律は因果関係がないという理由で、事件の加害者の損害賠償を免じている。
1から4のうち、アルバイトとしてはどこまで予想すべきだったろうか。慎重な裁判官だと、1~4の全てを否定し、ただ、アルバイトのその行為によって店の信用が大きく害されており、アルバイトもそのことは予想していた筈として、数十万円くらいを認めるのがやっとではないか。思い切った裁判官だと1,2、3も認めてくれるかもしれない。でも、店の閉店までは認めないのではなかろうか。

法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹

2013年08月13日
法律事務所ホームワン