企業法務コラム

下請法を守る意味

公正取引委員会が、公募の結果、平成25年度下請取引適正化推進月間のキャンペーン標語として、「下請代金 きちっと払って 築こう信用」が採用された。
http://www.jftc.go.jp/shitauke/oshirase/130731hyougo.html

(評)
下請法はもっとも守られていない法律の一つだろう。
ある中小企業の社長は「儲かる秘訣は?」と問われて一言。「安く仕入れて、高く売る。」。実際儲けを出す早道はまさにそこにある。だから、下請法で買い叩き行為は禁止されているが、買い叩きで勧告まで行くことは殆どない。そもそも、ここで言う買い叩きとは「類似品等の価格又は市価に比べて著しく低い下請代金を不当に定めること。」であり、「かなり」低いでは足りず、「著しく」低い必要があり、さすがにそのレベルでは下請け業者も応じられないから、実際買い叩きで勧告されることは少ない。
勧告例の殆どが「減額」、すなわち「あらかじめ定めた下請代金を減額すること。」である。販売促進費用への協力名目に下請代金に一定割合を負担するよう要請し、応じた業者についてはその額を下請代金の額から差し引くとかは典型的な例である。
しかし、最近はこういう露骨な方法ではなく、あの手、この手で減額を図ろうとしている。

・自らの商品開発のために実施するテストの費用を確保するため、下請事業者に対し、「商品のテスト費用」として、一定額を負担するよう要請した。(親事業者は大手小売)
・下請代金を手形ではなく、現金で支払うから、その分割引料がいらないだろうとして、代金の一定割合の減額を要請し、「支払時値引」としてその金額を差し引いた。(親事業者は大手小売)
・自社のコストを削減する目的で業務改善活動を行う延長で、下請事業者に対しても業務改善提案を行い、それによりコスト削減効果が生じただろうということで、親事業者が算出したコスト削減額に一定率を乗じて得た額を負担するよう要請し、その分報酬から差し引いた。(親事業者は貨物運送業者)

下請法は、諸法規を遵守するというコンプライアンス面の強化という側面から、各企業が実践して行く必要があるのではないか。下請法違反の底流にあるのは「会社の儲けになるから、法的には許されないが、商売としては「有り」だ。」という意識だろう。こうした意識が、カルテルとなって膨大な課徴金を科せられたり(特に米国では課徴金自体巨額ですし、その後の集団訴訟で莫大な和解金を支払わされたりしています)、消費者被害を起こして会社存亡の危機に立たされたりする。現場の人間に下請法の遵守を徹底させることは、こうした間違った意識を改革することになるのではないか。

法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹

2013年08月05日
法律事務所ホームワン