企業法務コラム

国連委員会が日本に「過労死対策」を初勧告 長時間労働是正へ見直し必要

国連の社会権規約委員会が日本政府に対して、過労死問題について勧告を行った。
勧告は5月17日付。「多くの労働者が非常に長時間の労働に従事し、過労死が発生し続けている。」と指摘し、「長時間労働を防ぐ措置を強化し、労働時間の制限に従わない事業者らに対し予防効果のある制裁を適用する」よう強く求める内容だという。
同勧告に法的拘束力はないが、対策の実施状況について定期的な報告が求められる。

※参考
2013年5月24日 日本経済新聞 朝刊
「過労死対策を」 国連委員会、日本に初勧告 長時間労働の是正など

(評)
平成23年12月に策定された「心理的負荷による精神障害の認定基準」によると、「1か月に80時間以上の時間外労働を行った」は付加強度は「中」に、「発病直前の連続した2か月間に、1月当たりおおむね120時間以上の時間外労働を行い、その業務内容が通常その程度の労働時間を要するものであった」及び「発病直前の連続した3か月間に、1月当たりおおむね100時間以上の時間外労働を行い、その業務内容が通常その程度の労働時間を要するものであった」場合は付加強度は「強」判定になる。この「強」とされる事実があって、うつ等を発症すれば、基本、労災認定されることになる。
また、長時間労働は、脳血管疾患、虚血性心疾患の原因ともなる。労働基準法施行規則の別表第1の2の8号の「長期間にわたる長時間の業務その他血管病変等を著しく増悪させる業務による脳出血、くも膜下出血、脳梗塞、高血圧性脳症、心筋梗塞、狭心症、心停止(心臓性突然死を含む。)若しくは解離性大動脈瘤又はこれらの疾病に付随する疾病」に該当することが立証されれば、特段の反証がない限り、業務上の疾病(労基法75条、労基則35条)と認められる。なお、この8号は、平成22年5月施行の労基則改正により新設されている。
労働基準局長発平成13年12月12日付通達「脳血管疾患及び虚血性心疾患(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」によると、「発症前1か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね時間を超えて時間外労働が長くなるなど、業務と発症との関連性が徐々に強まると評価できる」「発症前1か月間におおむね100時間、又は、発症前2か月間ないし6か月にわたって一か月80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できる」とされている。
長時間労働をなくすためには、仕事のプロセスを見直し、無駄な仕事がないかをチェックすることが重要だ。

法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹

2013年05月30日
法律事務所ホームワン