企業法務コラム

金融庁が検査評定制度を一部改正 中小企業融資積極化を促す

金融庁は中小企業向け融資を積極化するよう各金融機関に促す。金融機関に対する検査評定制度を一部改正し、同融資に前向きな金融機関への評価に反映させる。

※参照
金融庁ホームページ 
「預金等受入金融機関に係る検査評定制度について」の一部改正(案)の公表について
http://www.fsa.go.jp/news/24/ginkou/20130430-1.html#01

(評)
05年7月から策定され、運用されている「預金等受入金融機関に係る検査評定制度」。これは、金融検査マニュアルに基づき各金融機関を段階評価することで、「金融庁はおたくをこういう目で見ているよ」と示す制度であり、金融機関に対する行政指導の根幹をなす。
評定項目は、「経営管理( ガバナンス) 態勢 - 基本的要素 -」「金融円滑化編」「法令等遵守態勢」「顧客保護等管理態勢」「統合的リスク管理態勢」「自己資本管理態勢」「信用リスク管理態勢」「資産査定管理態勢」「市場リスク管理態勢」「流動性リスク管理態勢」「オペレーショナル・リスク管理態勢」の11項目よりなっており、項目ごとに加点要素、減点要素が指定され、この要素をもとに4段階評価が行われる。

※参照
「金融検査評定制度(預金等受入金融機関に係る検査評定制度)」
http://www.fsa.go.jp/manual/manualj/first.pdf

今回は、金融円滑化法終了に伴い、そのうち「金融円滑化編」が改正された。
今回、以下の項目が金融機関に対する加点項目として加わった。
・債務者の経営改善・事業再生等の支援に当たり、外部専門家、外部機関、他の金融機関等との連携について、主体的かつ積極的に取り組んでいる場合
・顧客の経営改善、事業再生、育成・成長につながる新規融資(特に中小・零細企業等向け融資)を促進するために、以下のような積極的な工夫・取組みを行っている場合
・資金需要の掘り起しについて、資金需要の高まりが期待できる事業分野や地域の定期的な分析を行い、その分析結果に基づき新規融資の戦略・方針・具体的な目標等を立てるなど、積極的な工夫・取組みを行っている場合
・貸付条件の変更等を行った債務者に対する新規融資について、債務者の実態を十分に把握した上で、積極的な取組みを行っている場合
・コンサルティング機能の発揮について、財務面のアドバイスに止まらず、売上増加等の本業支援(販路開拓支援・海外進出支援等)を行うなど、新規融資に結びつけるための積極的な工夫
・取組みを行っている場合
・ABLなど不動産担保や保証に依存しない融資の推進や資本性借入金の活用について、積極的な工夫・取組みを行っている場合
・新規融資の審査について、スコアリングによる定量面(P/L、B/S)の審査に偏重することなく、「目利き」能力の向上を図り、顧客の技術力や販売力等の定性面を勘案するなど、積極的な工
夫・取組みを行っている場合
・顧客の経営改善、事業再生、育成・成長につながる新規融資への取組みにより、顧客の育成・成長につながっている事例等が複数の営業店等にて認められる場合

※参照
「預金等受入金融機関に係る検査評定制度について」の一部改正(案)(新旧対照表)http://www.fsa.go.jp/news/24/ginkou/20130430-1/01.pdf

(キーワード)金融円滑化法 出口戦略 検査評定制度 リレーションシップ・バンキング 経営改善 事業再生

法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹

2013年05月09日
法律事務所ホームワン