企業法務コラム

精神障害者の雇用につき、労政審分科会が答申 法定雇用率引き上げへ

3月21日、労働政策審議会障害者雇用分科会は、厚労省作成の「障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案要綱」を、おおむね妥当と認める旨を厚労相に答申した。
同要綱は、雇用の分野における障害者に対する差別の禁止及び障害者が職場で働くに当たっての支障を改善するための措置(合理的配慮の提供義務)を定めるとともに、精神障害者を法定雇用率の算定基礎に加える等の措置を講ずることとしている。
厚生労働省は、本通常国会への改正法案を提出する予定だという。
ただ、受け入れ側の企業の負担は大きい。そのため、答申は「企業に対する大幅な支援策の充実を進めることを求める。」としており、使用者委員から「精神障害者を雇用できる一定の環境が整っていると判断することができない現段階で、実施時期を定めることは慎重であるべきとの意見があった」ことも付記している。

※参照
平成25年3月21日 厚生労働省ホームページ
「障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案要綱」の諮問及び答申について
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002xwnr.html

(評)
「障害者の雇用の促進等に関する法律」には障害者雇用納付金制度というものがある。雇用障害者数が法定雇用率(現行1.8%、4月から2%)に満たない事業主から、その雇用する障害者が1人不足するごとに1月当たり5万円を徴収し、それを原資として、法定雇用率を超えて障害者を雇用する事業主に対し、障害者雇用調整金(超過1人につき1月当たり2万7千円)や助成金を支給する仕組みだ。
この障害者雇用納付金の徴収は、昭和52年以降、経過措置として、常用雇用労働者を301人以上雇用する事業主のみを対象としてきた。しかし、平成22年7月からは、常用雇用労働者が200人を超え300人以下の事業主に、平成27年4月からは、常用雇用労働者が100人を超え200人以下の事業主にも納付金制度が拡大される。
精神障害者保健福祉手帳を持つ、そううつ病や統合失調症などの患者は、11年度には63万5048人に達する。これらも算定基礎に加えるとなると、法定雇用率はさらに引き上げられることになる。

法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹

2013年03月22日
法律事務所ホームワン