企業法務コラム

金利スワップ取引、銀行勝訴の最高裁判決 為替デリバティブ訴訟の面からも注目

3月7日、最高裁第1小法廷は、金利スワップ取引締結の際に銀行に説明義務違反があったとして、顧客からの不法行為に基づく損害賠償請求を認容した平成23年04月27日付福岡高裁判決を破棄した。
「本件取引は,将来の金利変動の予測が当たるか否かのみによって結果の有利不利が左右されるものであって,その基本的な構造ないし原理自体は単純で,少なくとも企業経営者であれば,その理解は一般に困難なものではな」いと述べ,銀行は「本件取引の基本的な仕組みや,契約上設定された変動金利及び固定金利について説明するとともに,変動金利が一定の利率を上回らなければ,融資における金利の支払よりも多額の金利を支払うリスクがある旨を説明した」とし,「基本的に説明義務を尽くした」と結論付けている。

※参照
平成25年3月7日 最高裁第一小法廷判決
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20130307144539.pdf

(評)
現在銀行相手に多数の為替デリバティブ訴訟が起こされており、今回の最高裁判決はむしろその面からの注目を集めていた。
当然銀行側は今回の最高裁判決を根拠に、為替デリバティブにおいても「客は、円安に振れればもうかり、円高に振れれば損をする、という単純な取引であり、将来の為替予測が当たるかのみによって結果の有利不利が左右される、単純なもの」と主張してくるだろう。
ただ、最高裁判決も認めているように「本件取引は,当事者間の合意に基づき,同一通貨間で,一定の想定元本,取引期間等を設定し,固定金利と変動金利を交換してその差額を決済するというもので,プレーン・バニラ・金利スワップと呼ばれる単純なもの」である。
為替デリバティブの場合、様々な商品があり、中にはノックアウト・オプションを加えたりという、複雑な仕組みのもの(エキゾチック・オプション)も多い。また、契約時点における為替デリバティブ取引の時価評価は、マイナス数千万円から数億円であり、スタート時点から巨額の含み損を「銀行への手数料」という形で抱えさせられている。大手はともかく、中小企業はデリバティブ取引を時価評価する機会がないため、気付かないまま取引を行っているのが実態だ。こうした特性を踏まえて、最高裁がどう判断するかは予断を許さない。

法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹

2013年03月08日
法律事務所ホームワン