企業法務コラム

全銀協の電子債権ネット始動 手形と売掛債権のいいとこ取り、利用増えるか注目

全国銀行協会は、株式会社全銀電子債権ネットワーク(通称「でんさいネット」)を設立。同社は、平成25年1月25日、大臣から電子債権記録機関として指定を受け、2月18日からサービスを開始した。全国491の金融機関を結び、手形や売掛債権に変わるペーパーレスの電子債権を一元的に記録し、管理する。

※参照
2012年2月19日 日本経済新聞 朝刊
「全銀協の電子債権、始動 中小の資金繰り円滑に」

(評)
「電子記録債権」は、電子記録債権法(平成19年法律第102号)により、事業者の資金調達の円滑化等を図るために創設された新しい類型の金銭債権である。
電子債権記録機関の記録原簿への電子記録をその発生・譲渡等の要件となり、手形と同様に、同債権の譲渡には善意取得や人的抗弁の切断が認められている。事業者は、パソコンやFAXなどで電子記録をすることが可能で、簡易・迅速性にも優れている。
手形は、流動性にすぐれるが、管理費用にコストがかかるほか、紛失リスクを回避できない。他方、売掛債権は簡単に譲渡できるが、債権が有効に存在するかを確認するためのコストがかかるし、二重譲渡リスクが避けられないため、流動性に乏しく早期資金化が困難である。電子債権は、両者の長所をいいとこ取りしたものといえる。
今までは、メガバンクが自前で電子債権記録を設立、他の金融機関は利用できなかったが、「でんさいネット」のサービス開始で、利用がどれほど増えるかが注目される。

法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹

2013年02月21日
法律事務所ホームワン