企業法務コラム

大阪高裁、「ブラック企業と評価の恐れ」。労災認定の企業名不開示をめぐり

過労死などで従業員が労災認定を受けた企業名を開示しないのは違法として、市民団体代表が大阪労働局の不開示決定の取り消しを求めた訴訟の控訴審判決が11月29日大阪高裁であった。山田知司裁判長は「情報公開法は法人などの正当の利益を害する恐れがあるものを不開示情報とし規定する」ところ、企業に過失がなくても「社会的には『過労死』『ブラック企業』という否定的評価をされ、信用が低下し、利益を害される蓋然性が認められる。」として、開示を命じた一審の大阪地裁判決を取消、請求を退けた。

※参考
2012年11月30日 日本経済新聞 朝刊
「労災認定の企業公表すると…「ブラック企業と評価の恐れ」 一審の開示命令、高裁が取り消し」

(評)
ネットで「ブラック企業」を検索してみると、膨大な情報に驚かされる。一度ブラック企業との烙印を押されると、求人しても人が集まらず、会社に大きな打撃となる。労災は必ずしも、企業側の故意過失とは関係なく成立する。業務起因性が認められれば、労働者が自らの過失で怪我をしても労災は認定される。にもかかわらず、労災が認定されただけで企業名がブラック企業として独り歩きしかねず、本判決には納得できる。

法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹

2012年12月04日
法律事務所ホームワン