企業法務コラム

改正暴対法、一部施行

12年10月30日から改正暴対法の一部施行が始まっている。
暴対法の正式名称は「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」。同法改正の概要は次の通り(段階的施行となっており、これら全部が施行されている訳ではない)。

1 対立抗争が発生した場合、公安委員会は、最大3ヶ月(延長もあり)、抗争関係にある指定暴力団を「特定抗争指定暴力団」として指定し、指定警戒区域内で以下の行為を行えば、中止命令なしに直ちに罰則による処罰の対象とする。
 ①事務所設置、抗争相手の関係先をうろつく行為
 ②一般人も含め特定構想指定暴力団の事務所に立ち入り、又はとどまる行為
2 指定暴力団員等が人の生命等に重大な危害を加えるような暴力行為を行い、かつ、反復のおそれある場合、公安委員会は、最大1年以内、その者が所属する指定暴力団を「特定危険指定暴力団」し、警戒区域内で、区域内の人の生活等に関して暴力的要求行為等を行えば、中止命令なしに直ちに罰則による処罰の対象とする。
3 都道府県暴力追放運動推進センターが、住民の委託を受けた場合、暴力団事務所の使用等の差止め請求行為(裁判手続を含む)をする権限を有する。
4 指定暴力団員が指定暴力団等の威力を示してする以下の行為を規制行為に追加
 ①金融商品取引業者等に対し金融商品取引行為を行うことを要求する行為
 ②公共工事の契約等に関する暴力的要求行為(国等の契約等全般に拡大)
 ③公共工事に入札に参加しないことをみだりに要求する行為
5 1年以下の懲役又は50万円以下の罰金を、3年以上の懲役、500万円以下の
罰金に強化

(評)
暴力団排除に対する報復とみられる企業襲撃事件が07年以降12年9月末までに全国で114件発生している。そして、その6割68件が福岡で起きているが、摘発までいたったのは7件のみ。現行規定では、報復が危惧される人物への暴力的要求行為等があっても、いったん中止命令を出し、それが守られないとなってようやく摘発、という迂遠な手続が必要だったが、今回の改正で則逮捕となる。
溝口敦氏は新著「続・暴力団」(新潮新書)で暴対法、暴排条例が却って暴力団を凶暴化、潜在化させると批判していたが、特に福岡の動きに注視したい。

法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹

2012年11月14日
法律事務所ホームワン