企業法務コラム

日銀、異例の共同文書。展望レポートには厳しい見方も

日銀は10月30日に開いた金融政策決定会合で、資産買入基金を11兆円程度増額し91兆円とした。長期国債、短期国債を5兆円ずつ、ETFを5000億円、社債を3000億円、CPを1000億円、REITを100億円程度積み足す予定。
10月5日の会合に引き続き、前原経財相が出席。政府側からも金融緩和圧力を受けての決定だった。異例だったのは白川総裁、城島財務省、前原経財相の連名による共同文書が公開されたことだ。日銀が物価上昇率1%を目指し、強力な金融緩和を進める一方、政府は経済対策を速やかに取りまとめるとともに、日本再生戦略に盛り込んだ規制・制度改革などを13年度までに実行に移すことが明記された。
また同会合では、貸出を増やした金融機関に対する新たな資金供給策の導入を決めた。詳細な制度設計は年内をめどに固める。
同日発表された展望レポートでは、14年のCPI上昇率の見通しを消費税引上の影響を除き前年度比0.8%とした。実質経済成長率見通しも12年度、13年度を1.5%、14年度を0.6%と下方修正した。

※参考
2012年10月30日 日本経済新聞電子版
「前原経財相、共同文書「デフレ脱却へ重要な一歩」」
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFL300IS_Q2A031C1000000/
2012年10月31日 日本経済新聞電子版
「物価上昇、14年度は1%届かず 日銀展望リポ-ト」
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGC3002B_Q2A031C1MM8000/

(評)
11兆円は過去最大ではあるが、これまでは10兆円だったのを1兆円上げただけ。これをもってサプライズとは言い難い。
リーマン・ショック後の各中銀のマネー供給量を見ると、ECBが約2倍増、FRBは約3倍増だが、わが日銀は横ばいに近い。米欧中銀がバズーカ砲なら、日銀はピストルだ。現行の物価目標1%もいかにも低い、少なくとも2%に上げるべきだろう。
展望レポートは14年度の物価上昇率を前年度比0.8%と予想したが、市場はむしろマイナスとの予想が大勢。「このまま行けば2年後には偏差値がいくつ上がるから、今はこの程度の勉強時間で良いよね」なんて言っている大甘受験生と日銀の姿が重なってくる。

法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹

2012年11月02日
法律事務所ホームワン