企業法務コラム

信託銀、遺言信託業務拡大図る。後見制度に信託利用も

三井住友信託銀行は預り資産残高3000万円以上の顧客に対し、6月から遺言信託の申込み手数料31万3000円を無料にするキャンペーンを9月末にいったん申込を停止していたが、11月から再開する。条件は現在検討中のようだが、預かり資産5000万円以上の顧客に対し、恒久的に手数料を無料にすることになりそうだ。

※参考
2012年10月16日 日本経済新聞 朝刊
「信託銀、相続を拡大 手数料無料や最低額下げ 資産運用などの起点に」

(評)
日経によれば、遺言信託の引受を手掛かりにして、相続対策として収益不動産の取得を提案したり、不要な不動産の処分を引き受けたり、投信を販売するのだとのこと。他の信託銀行も、同様の動機から、様々な形で、遺言信託業務の拡大を図っている。
狙いが見えすぎて興冷めするところもあるが、相続税リスクは高まりつつある。既に小規模宅地の適用条件が厳格化され、今後相続税の基礎控除額の減額もあるからだ。まだ元気でいるうちに、いざというときどれだけ相続税がかかるのかを試算してみて、実際、相続税をどうやって支払うのかを検討する必要はあるだろう。
因みに、高齢者→認知症→資産保護というつながりで考えて行くと、後見制度支援信託なる最高裁の肝いりで始められた制度も頭の片隅に入れておいてもいいかもしれない。この場合は任意後見制度との組み合わせが必要になる。

※資料
家庭裁判所リーフレット「後見制度において利用する信託の概要」
http://www.courts.go.jp/vcms_lf/210034.pdf

法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹

2012年10月19日
法律事務所ホームワン