企業法務コラム

西武鉄道有価証券報告書虚偽記載事件、最高裁が新基準

西武鉄道が有価証券報告書の虚偽記載を行ったことによる株価下落で損害を受けたとして、株主らが同社や役員などに損害賠償を求めていた4件の上告審判決で、最高裁第3小法廷は9月13日、虚偽記載による賠償額を「株主の株取得価格と売却価格の差額から、虚偽記載公表前の市場動向などによる下落分を差し引いた額」と、損害額を広く解する初判断を示し、高裁判決を破棄し、差し戻した。
ところで、東証は,昭和57年に、上位10名の株主が所有する株式等が全体の80%を超えている場合を、新たに上場廃止基準に加えたのだが、西武鉄道は、この当時から、この基準に違反していた状態が続いていた。同社は有価証券報告書にその旨を記載せずにいたが、平成16年10月これが発覚、同年11月に上場廃止となった。

虚偽記載公表後、多くの株主が慌てて売却し、客観的な価格をはるかに下回る形で株価が暴落したが、最高裁はこうした下落も損害に含めるべきとした。また西武側は公表前、上場廃止基準に該当していた状況を解消するために株を売却するなどし、この結果株価が下落した可能性もあり、判決ではこの点も株主に損害を与えた可能性があるとした。
今後差し戻し後の高裁審理では、最高裁判決が新たに示した基準に従って損害額を算出し直すことになる。

参照:最高裁HPより判決文
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20110913175050.pdf

2011年09月21日
法律事務所ホームワン