経営改善計画とPDCA

経営改善計画の実行が重要

経営改善計画は承認されてからが勝負です。その後は金融機関から計画の進捗状況を月毎に、もしくは4半期毎にチェックを受けます。これをモニタリングと言います。

モニタリングの結果、売上高等及び当期利益が事業計画に比して概ね8割以上確保できないことが判明すると、金融機関から破綻懸念先に格下げされ、一括返済を求められる可能性もあります。

ただ8割以上を確保できなかったとしても、その要因が一時的かつ外部的な影響によるものであったり、何らかの問題があったが既に十分な対応を行っている、など今後の経営改善の見通しに特段の問題がないのであれば、当該企業はそのままリスケジュールを続けられます。

そうして、認定支援機関も、計画の進捗状況を定期的にモニタリングして、その結果を経営改善支援センターに報告することになっています。

このため、企業は経営改善計画を確実に実行する必要があり、そのためにもPDCAサイクルを回し、下振れの芽を見つけたら、認定支援機関とも相談し、すぐに見直し・改善を図っていくことが必要です。

PDCAサイクル

1.PDCAとは

(1)
PLAN(計画):まず計画を立てる。
(2)
DO(実施・実行):計画に沿って業務を行う。
(3)
CHECK(点検・評価):業務の実施が計画に沿っているかどうかを確認する。
(4)
ACT(処置・改善):実施が計画に沿っていない部分があれば、改善策を策定する。

そして改善策を実行に移すための計画を立て、それを実行、確認し、不備があれば改善し、というふうに、PDCAを絶えず繰り返して行く(回す)必要があります。

2.PDCAを具体的にいうと

社長さんの頭の中には、意識はしなくても必ず一定の計画があるはずです。それを「見える化」することが必要です。
そしてその計画を実現するため、事業の結果を数値化する必要があります。たとえば「取引先を拡大する」というだけでは足りず、「取引先を月●社増やす」と明確に目標設定することが必要です。それをAさんは●件、Bさんは●件というふうに、各営業マンに目標数値を割り振る必要があります。社長が一方的に割り振ってもモチベーションは上がりません。会社全体ではこれだけの利益を上げなければならない、そのためにはこれだけの売上にしなければならない、そのためには個々人でこれだけ頑張って貰う必要があるということを従業員一人一人に自覚してもらう必要があります。その数字が各従業員にとって達成可能な数字だと認識される必要があります。
計画が現場で実施されなければ机上の空論です。計画の実施は「当初計画通りに行って行く必要」があります。もしも、個々の従業員が業務をやりやすいようにアレンジしてしまうと、評価基準がそのまま当てはまらないということもあります。
その数値を定期的にチェックし、経営が改善されているかどうかを確認する必要があります。
結果が目標に達していなければ、実行が不十分だったのかを検討し、実行が不十分ということであれば、各従業員レベルでの対策で足ります。ただ、実行が元々難しい計画だったのであれば、計画を現実的なものにします。実行はできているのに結果が芳しくないということであれば、計画自体が間違っていることになります。

絶えず回し続ける重要性

一部の従業員が大きなブレーキになっている、計画通りに進めるには人員ないし予算不足、そもそも計画・方針が誤っているといった場合に、これをそのままに放置するとマイナスが拡大します。ですから、軌道修正は早い方が良いのです。そのためにも、PDCAは絶えず回し続ける必要があります。

PDCAでは4項目の管理が必要

PDCAサイクルを効率よく回していくためには、以下の4項目を管理する必要があります

  1. 採算管理
  2. 月次決算
  3. 資金管理
  4. 裁量的経費の管理

採算管理

製品別、部門別、取引先別、地域別等、事業の実態に即し、それぞれの売上と原価から限界利益を算出、どれだけ売り上げを伸ばしたら黒字になるのか、どこの部分の原価を下げるのが効率的か、売り上げと原価の両方から検討する必要があります。

経費削減にはどのような方法論があるのでしょう。例えば、レストランを例にとって考えてみましょう。高い材料Aと安い材料Bのどちらを使っても味がそれほど変わらなければ、安いものを使えばいいでしょう。例えば炒めるときは安いオリーブ油を使い、ドレッシングやカプレーゼでは高いオリーブ油を使うとかです。製品別の売り上げを見て、不人気商品はメニューから外していき、人気商品を定番化します。複数のメニューでなるべく食材を共通化し、日替わりメニューで余った食材を使うことで、食材の廃棄率を低くします。しかし、こういた改善策を作るためにも採算管理を細かく行う必要があるのです。

社長さんの中には、大体の原価率は頭に入っているから、こんな採算管理は不要だと言われる方もいるかもしれません。その場合、取りあえず売れ筋メニューから、材料費を概算で計算して、粗利を把握してみましょう。もし、頭の中の数字と違っていたら、他のメニューについても調べてみましょう。

お客がどの部分にウェイトを置いているかを知り、その部分にお金を使い、そうでない部分にはお金を使わない工夫も必要です。

顧客の好みは絶えず一定している訳ではありません。推移分析、比較分析ができるようになると、売上の変化を早期に掴めることができます。

日本電産の永盛重信社長は、企業の再建の第一歩は経費削減だといいます。1円以上の支出をすべて永守社長が決済することで、コスト意識を高めさせ、永守社長を含めて、内部で3~5段階のチェック体制を設けることで、費用削減の取り組みを徹底するそうです。

月次決算

月次決算は日次決算を積み上げて行います。棚卸も月次で行います。費用が主に固定費だけということであれば、売上だけをチェックする形でも良いでしょう。

社長さんの頭の中で、一応の数字はあるでしょう。しかし、それを「見える化」することで、より客観的に経営状況を判断することができるでしょう。それに、社長さんの頭の中にあっても、金融機関にはそれが見えませんから、客観的に数字として見えなければ、金融機関とのコミュニケーションも成り立ちません。月次の決算がないだけで、金融機関からは、経営管理ができていないと見られてしまいます。

月次決算はできれば翌月10日にはできていることが理想です。最悪でも翌月末にはできていないと、月次での管理ができません。従業員も前々月の数字が悪かったぞと言われてもピンとこないでしょうし、前々月の数字が良かったぞと言われても、励みになりにくいでしょう。

月次決算を早くできないということは、各現場での数値管理ができていないということです。月次決算を早くすることで、現場の数値管理能力も向上します。コマツの坂根正弘現特別顧問は、2001年社長に就任した当時、コマツは創立以来初の赤字となるなど厳しい状況にありましたが、構造改革の断行により2003年3月期には約330億円の営業黒字というV字回復を達成しました。坂根社長は、製造部門だけでなく、事務部門でも生産性向上を追求しました。経理部門には、月次決算を翌月10日に出すことを目標として課し、これを実現しました。経理の効率化というだけでなく、事業報告の仕方にも変化が出てきたと言います。

資金管理

資金繰り表を作成し、資金ショートに備える必要があります。資金繰り表の作成にあたっては、まず過去の年間の資金繰り実績を作成します。そうすることで、資金繰りの季節性等の特徴を把握することができます。面倒くさいと思ったら、取りあえずは3か月分を作ってみて、そこから徐々に先のものを作ってみましょう。

どの社長も、毎月の資金繰りは、大体頭の中に入っています。ただ、売上が大きく変化したり、仕入先が変わったりということがあると、いつもの資金繰りではやりくりがつかず、直前になって、資金ショートに気がつくことがあります。資金に余裕のある会社ならともかく、余裕のない会社の場合、目算がちょっとずれただけで資金ショートを起こしてしまいます。直前に銀行に駆け込んでも銀行はお金を貸してくれません。黒字でも倒産はするのです。資金繰り表を毎月作っておけば(業界によっては毎週ということもありえます)、早い段階から資金ショート対策をとることができ、黒字倒産を避けることができます。

裁量的経費

裁量的経費とは経営者の裁量により支出を抑えることができる経費のことを言います。接待交通費、広告宣伝費、残業代がこれに当たります。実績が計画を下回った場合、貯えがなければ、この裁量的経費の支出を抑えることで、危機に対処できます。ただ、裁量的経費の内容を精査し、最悪このくらいなら削減できるといった、見込みをはっきりさせておく必要があります。

金融機関から、計画の甘さを指摘された場合、下振れしてもこの部分の経費を減らせるからと説明することで、計画の不透明さをカバーできます。裁量的経費も正確に把握することでバッファーになりうるのです。

全ての経費には理由がなければなりません。なぜ、その金額を、そのことに使うのか、一つ一つに理由がなければなりません。接待交際費においても、その接待交際費を出すことにより、どのような成果が得られるのか、その成果は接待交際費に見合ったものかを、よく考えて、優先順位を付け、優先度の低い順に削減する必要があります。少なくとも、接待交際費については、個別承認表を作りましょう。

広告費についても、削減しても、その分頭を使い、削除しても同じ効果を上げられるよう努力するべきです。