労働問題

解雇、雇い止め、退職の可否、割増賃金、名ばかり管理職等をめぐって訴訟が多発しています。こうした事態に備え、社内の体制を整備し、手続も入念に行う必要があります。法律事務所ホームワンは、人事・労務問題に関して幅広く法的アドバイスを提供いたします。
また、近年注目されている各種ハラスメントについては、こちらのページをご覧ください。
http://www.home-one.jp/kigyouhoumu/service/harassment/

労働時間管理義務

使用者は、雇用契約に付随する義務として、労働者の生命、身体及び健康を危険から保護するように配慮すべき安全配慮義務を負い(労働契約法5条)、その具体的内容として、労働時間を適切に管理し、労働時間、休憩時間、休日、休憩場所等について適正な労働条件を確保し、健康診断を実施した上、労働者の年齢、健康状態等に応じて従事する作業時間及び作業内容の軽減等適切な措置を採るべき義務を負っています。そして、これに違反した場合には、安全配慮義務違反の債務不履行であるとともに不法行為を構成することになります。

平成13年4月6日付け基発第339号「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準について」

厚生労働省は、使用者が労働時間を適切に管理する責務を有するにもかかわらず、現状では、労働時間の把握に係る自己申告制の不適正な運用に伴い、割増賃金の未払や過重な長時間労働といった問題が生じているなど、上記管理が適切に行われていない現状を踏まえ、労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置を具体的に明らかにすることにより、労働時間の適切な管理の促進を図るため、標記基準を発表しています。

同通達は、使用者は、労働時間を適正に管理するため、①労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、これを記録すること、②確認及び記録は、使用者が自ら現認することにより確認し、記録するか、タイムカード、ICカード等の客観的な記録を基礎として確認し、記録することを原則とし、③自己申告制により行わざるを得ない場合は、導入前に、その対象となる労働者に対して、労働時間の実態を正しく記録し、適正に自己申告を行うことなどについて十分な説明を行い、自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているかどうかについて、必要に応じて実態調査を実施すること、④労働者の労働時間の適正な申告を阻害する目的で時間外労働時間数の上限を設定するなどの措置を講じないこと、⑤時間外労働時間の削減のための社内通達や時間外労働手当の定額払等労働時間に係る事業場の措置が、労働者の労働時間の適正な申告を阻害する要因となっていないか確認するとともに、当該要因となっている場合には、改善のための措置を講ずること等を内容としています。

このような労働時間の適切な管理がなされていないと、従業員が長時間労働の結果精神障害を負ったとして訴えられた場合、長時間労働が認定されやすくなるとともに、安全配慮義務違反の一つととらえられてしまいます。
また従業員から割増賃金を請求された場合、従業員がつけていた出退勤メモが証拠と認められて、不利な事実認定を受けることもあります。

解雇

労働事件の多くが、解雇に関するものですが、以下の事項は必ず押えておく必要があります。生兵法は怪我の下です。

  1. 就業規則に普通解雇事由を定める必要性
    就業規則に定めた解雇事由に限り、解雇をなしうるか、それとも、就業規則で解雇事由を定めていなくても解雇をなしうるのか、争いがあります。
    平成16年1月1日から施行された改正労働基準法では、就業規則に「解雇事由」を記載することが義務付けられました。このため、現在は、就業規則に定められていない理由による解雇は無効とする裁判例が増えています。考えられる解雇事由はすべて列挙した方がいいでしょう。さらに、列挙した以外の事由で解雇することができるように、普通解雇事由に「懲戒解雇事由に該当したとき。」「その他前各号に準ずるやむを得ない事由があるとき」との事項を加えることが重要です。
  2. 就業規則に普通解雇事由がある場合にも解雇は自由になしえない
    労働契約法16条は、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とする。」と規定しています。本来権利濫用という場合、挙証責任は権利濫用を主張する側にあるのが訴訟法上の原則なのですが、裁判所は釈明権を利用することで事実上使用者側に挙証責任を負わせています。
  3. 懲戒解雇
    懲戒解雇をするには、必ず就業規則に懲戒事由と懲戒の種類が定められていることが必要です。また懲戒解雇の場合、退職金を不支給とするのであれば、その旨の規定も必要です。ただ退職金不支給規定があって、懲戒解雇が有効だからといって、必ずしも退職金の不支給が認められる訳ではありません。退職金不支給を認めた判決例を見ると、在職中から競業企業の立ち上げを策し、他の従業員の参加を求めていた等かなり悪質な例に限られているようです。
  4. 解雇には手順が必要
    欠勤が多い、遅刻が多いといった従業員についても、譴責→減給→解雇とステップを踏むことが重要です。口頭注意で終わらせた場合、証拠に残りませんし、一足飛びに解雇したということで相当性を欠くとして解雇が無効となりかねません。
    懲戒解雇は要件が厳しいため、懲戒解雇とともに予備的に普通解雇をしておくべきです。裁判となった際に、懲戒解雇が無理と判断し、普通解雇に切り替えても、その時点以前に発生した賃金について支払義務が発生してしまいます。
    懲戒解雇の場合、予告手当を払わなくて良いと単純に考えるのは危険です。所轄の労働基準監督署に「解雇予告手当除外認定申請」を提出して、認定を受けることが必要です。認定を受けずに懲戒解雇をし、予告手当を払わないとなると刑事処分の対象となります。認定を受けるためには次の要件が必要です。
    • ①極めて軽微なものを除き、事業場における盗取、横領、傷害等刑法に該当する行為のあった場合。又は、事業場外であってそれら刑法犯に該当する行為によって事業場の名誉、信用が失われたり取引関係に悪影響を与えたような場合。
    • ②事業場内で賭博、風紀紊乱等により職場規律を乱し、他の労働者に悪影響を及ぼす場合。
    • ③雇い入れの際の採用条件の要素となるような経歴を詐称した場合及び雇入れの際、使用者の行う調査に対し、不採用の原因となるような経歴を詐称した場合。
    • ④他の事業へ転職した場合。
    • ⑤原則として2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合。
    • ⑥出勤不良または出勤常ならず、数回にわたって注意を受けても改めない場合。
      (昭23.11.11基発第1637号、昭31.3.1基発第111号)
  5. 整理解雇
    整理解雇には「人員削減の必要性、解雇回避努力義務、被解雇者選定の客観性・妥当性、手続きの妥当性」の4要件が必要というのが判例です。
    ただ、丸子警報器事件の高裁判決を始め、最近多くの判決が、4要件とは言わず「4要素」という言い方をするようになっています。すなわち、4要件全てがそろっている必要はなく、4要素を総合的に考慮すれば足りる、というのです。
    4要件中、3つの要件が強く存在すれば、残りの1つの要件が弱くても、整理解雇基準を満たすという場合もありえますし、さらには、場合によっては3要素が存在すれば足りるということもありえます。

雇い止め

雇い止めとは

期間の定めのある雇用契約において、雇用期間が満了したときに使用者が契約を更新せずに、労働者を辞めさせることを言います。

労働契約を解約する場合のルール

期間の定めのない労働契約と期間の定めのある労働契約とでルールが違ってきます。

期間の定めがない場合(正社員)

労働者側は2週間の予告期間をおけばいつでも理由なく解約することができます(民法627条)。
使用者側は30日間の予告期間をおくことで解約ができます(労基法20条)。但し客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とされます(労働契約法16条)。

期間の定めがある場合(有期労働契約、有期雇用)

当該期間の間はやむを得ない理由がない限り双方とも解約できません(労働契約法17条1項)が、期間の満了により自動的に契約も終了します。
ただしこの「期間」は3年を超えることができません(労働基準法14条)。
「やむを得ない理由」ですが,裁判所は「期間満了まで待てないような事由」の有無を一つの判断基準としています(安川電機八幡工場事件・福岡高判平成14年9月18日)。

雇止めについての告示

有期労働契約の締結、更新、雇止めについては、平成12年に通達の形で指針が示されていましたが、平成15年にその内容が告示に格上げされました。
「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」(平15厚労省告示357号、平成20年3月1日一部改正)。

1.契約締結時の明示事項等

(1)
使用者は、有期契約労働者に対して、契約の締結時にその契約の更新の有無を明示しなければなりません。

(契約更新の有無の具体的な明示例)

  1. 自動的に更新する
  2. 更新する場合が有り得る
  3. 契約の更新はしない 等

(2)
使用者が、有期労働契約を更新する場合があると明示したときは、労働者に対して、契約を更新する場合又はしない場合の判断基準を明示しなければなりません。

(判断基準の具体的な明示例)

  1. 契約期間満了時の業務量により判断する
  2. 労働者の勤務成績、態度により判断する
  3. 労働者の能力により判断する
  4. 法人の経営状況により判断する
  5. 従事している業務の進捗状況により判断する 等

(3)
使用者は、有期労働契約の締結後に上記(1)、(2)の記載事項を変更する場合には、労働者に対して、速やかにその内容を明示しなければなりません。
※告示には規定はありませんが、将来のトラブル防止のため、書面化したほうがよいでしょう。

2.雇止めの予告

契約を3回以上更新し、勤続1年超の有期雇用されている者(あらかじめ当該契約を更新しない旨明示されている者を除く)について、契約を更新しない場合、使用者は、少なくとも当該契約期間満了30 日前までに、更新しない旨を予告しなければなりません。

3.雇止めの理由の明示

2の規定により雇止めを予告した場合において、雇止めする理由について証明書を請求したときは、使用者は遅滞なくこれを交付しなければなりません。 雇止めにより契約が終了した後においても、労働者が雇止め理由について証明書を請求したときは、使用者は遅滞なくこれを交付しなければなりません。

4.契約期間についての配慮

使用者は、有期労働契約(当該契約を1回以上更新し、かつ、雇入れの日から起算して1年を超えて継続勤務している者に係るものに限る。)を更新しようとする場合においては、当該契約の実態及び当該労働者の希望に応じて、契約期間をできる限り長くするよう努めなければなりません。
http://www.pref.aichi.jp/cmsfiles/contents/0000007/7060/h25-dai3bu(4.5).pdf

雇止めがどういう場合許されないか

労働契約法19条は、どういう場合に雇止めが許されないかを規定していますが、非常にわかりにくい文章になっています。
分かりやすく言うと,次の場合,雇止めは認められません。

  • 有期雇用が実質的に期限の定めのない労働契約と同視することができるような場合
  • 労働者が雇用を継続されることに期待を有し、その期待に合理性が認められる場合

上記の何れかに該当するかどうかは、以下の諸事情を総合的に考慮して判断されます。

  • 従事する仕事の種類・内容・勤務の形態( 業務内容の恒常性・臨時性、業務内容についての正社員との同一性の有無等)
  • 地位の基幹性・臨時性( 嘱託・非常勤講師等)
  • 労働条件についての正社員との同一性の有無
  • 継続雇用を期待させる当事者の言動・認識の有無・程度等( 採用に際しての雇用契約の期間や、更新ないし継続雇用の見込み等についての雇主側からの説明等)
  • 契約更新の状況( 反復更新の有無・回数、勤続年数等)
  • 契約更新時における手続の厳格性の程度( 更新手続の有無・時期・方法、更新の可否の判断方法等)
  • 同様の地位にある他の労働者の雇止めの有無等
  • 有期労働契約を締結した経緯
  • 勤続年数・年齢等の上限の設定等

最高裁判例

  • 実質的には、契約社員の業務内容等が正社員の業務内容と差異がなく、期間が満了しても契約更新手続がすぐになされず、多くの契約社員が継続雇用されているなどの事情から実質的に期間の定めのない契約と異ならない状態で継続していたとして、雇止めを無効とした。(東芝柳町事件最高裁判決・最高裁昭和49年7月22日第一小法廷判決)
  • 業務内容が正社員より簡易で、契約更新の手続がきちんと行われていたが、業務内容が季節的・臨時的なものではなく、雇用関係がある程度継続することが期待されており、5回にわたり契約が更新されていることから解雇に関する法理が類推されるとした。(最高裁昭和60年12月4日・第一小法廷判決日立メディコ事件)

退職

退職届は、労働契約の合意解約を会社に申し込む行為にすぎず、会社がこれを承認(承諾)することで初めて合意解約=退職の効果が発生します。ですから、会社が承認するまでは、いったん出してた退職届を撤回することが可能なのです。このため、いつ会社が承諾したと言えるかが、問題になることがあります。この場合、退職届を受け取った者が、退職の受理=承認の権限を持つかどうかが重要になってきます。例えば直属の課長が「分かった」と言って、受け取った退職届を机に入れておくだけだと、単なる「預り」になってしまいます。

ですから、例えば、職務権限規程で、人事部長が単独で従業員の退職願を承認できる旨決めておくこと、そして、社内でもこの旨を周知徹底し、人事部長以外の者が退職届を受け取った場合は、すぐに人事部長に回るようにすべきです。かつ、日付入りの受理・決裁印や退職者への受取り通知、その受領印を取っておくことが、あとでトラブルになったときに証拠として使えます。

また、人事部長に回ってくるのが遅くなり、その間に退職届が撤回された場合(そういうことがないようにしなければならないのですが)、そういったミスを救済する規定を置いておくのも、良いでしょう。

就業規則の規定例を以下にかかげておきます。

第●条(退職)
従業員が次のいずれかに該当するときは、退職とする。
(1)退職を願い出て会社が承認したとき、又は退職願を提出して14日を経過したとき
(2)略

同一労働・同一賃金

同一労働・同一賃金とは

「同一労働・同一賃金」とは、パートや契約社員でも、仕事の内容が同じであれば、正社員と同じ賃金を払うべき、という考え方です。

労働契約法の現状

労働契約法第20条は、有期契約労働者(契約社員)と無期契約労働者(正社員)との間の労働条件の相違の可否について、次のように規定しています。同条は「同一労働・同一賃金」を採用したものではなく、「同一の職務内容であっても賃金をより低く設定することが不合理とされない場合がありうる」ことが前提となっています。

「有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。」
この規定を逆に読めば、

  1. 労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)
  2. 当該職務の内容及び配置の変更の範囲
  3. その他の事情を考慮して、不合理と認められるものでなければ、正社員と契約社員との間に、労働条件について差別を設けることも可能

ということになります。

労働条件の相違は、「合理的なものでなければ認められない(この場合当事者の合意に代替するだけの合理性が必要)」というのではなく、「差別も、不合理でなければ認められる」というのですから、経営的合理性はより広く認められます(正確に言いますと「有期契約労働者の労働条件が、無期契約労働者の労働条件に比し、上記20条の趣旨に照らして法的に否認すべき内容ないし程度で不公正に低いものであってはならない。」とされています)。
雇用する会社の側は、①職務の内容(業務の内容や業務の責任の程度の違い)、②職務の内容及び配置の変更(転勤、昇進といった人事異動が将来ありうる等)、③その他の事情(残業義務、遠隔地・海外転勤義務)の各場面において、正社員と契約社員とで違いをつけるようにしているため、賃金にある程度格差があっても「不合理でない」とされてしまいます。そのため、給料に差があることを違法と争える場面は、意外と少ないのです。そのため、通勤手当の支給、社内食堂の利用の可否等、瑣末な場面でしか、20条が活用されないきらいがありました。

パート労働法の現状

パート労働法(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)第8条は、労働契約法第20条と同様の規定を置いています。

労働者派遣法の現状

派遣労働法(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律)第30条の3は、次のように規定し、派遣事業者に、派遣社員と派遣先労働者との間の賃金水準の均衡についての配慮を求めるにとどまり、差別禁止規定は設けていません。
派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者の従事する業務と同種の業務に従事する派遣先に雇用される労働者の賃金水準との均衡を考慮しつつ、当該派遣労働者の従事する業務と同種の業務に従事する一般の労働者の賃金水準又は当該派遣労働者の職務の内容、職務の成果、意欲、能力若しくは経験等を勘案し、当該派遣労働者の賃金を決定するように配慮しなければならない。

丸子警報器事件判決(平成8年3月15日長野地裁上田支部)

同判決は、「雇用期間2か月の雇用契約を更新するという形で継続して勤務している女性臨時社員(最長で25年間継続して勤務している者も存在した)が女性正社員と同じ組立ラインに配属され、同様の仕事に従事しており、その勤務時間も通常午前8時20分から午後5時までで、他の正社員と同じであり(ただし、午後4時45分から15分間は残業扱い。)。勤務日数も正社員と同じであり、いわゆるQCサークル活動にも正社員とほぼ同様に参加している。会社の賃金体系においては、正社員については基本給は原則的には年功序列となっている一方で、臨時職員については3ランクに分かれており、勤続年数10年以上、3年以上10年未満、3年未満となっている。」という事案で、「最も重要な労働内容が同一であること、一定期間以上勤務した臨時社員については年功という要素も正社員と同様に考慮すべきであること、その他本件に現れた一切の事情に加え、使用者において同一(価値)労働同一賃金の原則が公序ではないということのほか賃金格差を正当化する事情を何ら主張立証していないことも考慮すれば、女性臨時社員の賃金が、同じ勤続年数の女性正社員の8割以下となるときは、その限度において使用者の裁量が公序良俗違反になる」(以上概略)としました。
この判決は、労働契約法第20条の原点ともいえる判決でした。

長澤運輸事件判決(平成28年5月13日東京地裁判決)

そうした中で、一石を投じたのが「長澤運輸事件」です。要約していいますと、従業員100人ほどの運送会社で、定年後、有期契約労働者として再雇用されたドライバーが、「定年前と全く同じ仕事なのに、正社員より給料が低くなったのは法律違反だ、これまでの給料の差額を支払え」と訴えた事件で、最近判決が出ました。そこではドライバー側の主張が認められて、会社は差額を支払うよう命じられました。
同判決は、「有期契約労働者の職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲が無期契約労働者と同一であるにもかかわらず、労働者にとって重要な労働条件である賃金の額について、有期契約労働者と無期契約労働者との間に相違を設けることは、その相違の程度にかかわらず、これを正当と解すべき特段の事情がない限り、不合理であるとの評価を免れない。」としました。
会社側は、①高年齢者雇用安定法により義務付けられている高年齢者雇用確保措置として締結された労働契約であり、②同法の改正の目的たる年金の雇用の接続という趣旨に沿った内容のものであり、③労働組合とも協議を行った結果できた制度であるとして、差別を正当と解すべき特段の事情があると主張しました。しかし、裁判所は①財務状況ないし経営状況上合理的と認められるような賃金コスト圧縮の必要性も認められず、②同社の再雇用制度が年金と雇用の接続を図るという合理性はあっても、それをもって同じ業務をさせながら賃金差別を設ける理由にはならず、③会社と組合が合意してできたものではなく、会社が団体交渉において本件組合の主張・意見を聞いた後に独自に決定して本件組合に通知したものであり、会社は組合から賃金差別の正当性を基礎づける経営資料の提示を求められながらこれに応じておらず実質的協議がなされたとは言えない、として会社の主張を退けています。(多少意訳しています)
丸子警報器事件は、有期契約労働者が無期契約労働者と全く同じ業務内容についていても無期契約労働者の賃金の8割以上の賃金を得ていれば適法とされたのですが、長澤運輸事件判決では同一賃金を求められています。
小さな会社だと、もともと転勤や異動の可能性も少ないですし、ドライバーのように有期契約労働者と無期契約労働者とで、職務の内容に差をつけるのも難しいため、こうした判決が出てしまう可能性があります。特に本判決は、労働専門部のある東京地裁のものであるだけに、影響が大きいと言えます。

同一労働・同一賃金に向け法改正も視野に

平成28年6月2日に閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」の中で、政府は、「同一労働同一賃金」の実現に向けて、「ガイドラインの策定等を通じ、不合理な待遇差として是正すべきものを明らかにする。その是正が円滑に行われるよう、欧州の制度も参考にしつつ、不合理な待遇差に関する司法判断の根拠規定の整備、非正規雇用労働者と正規労働者との待遇差に関する事業者の説明義務の整備などを含め、労働契約法、パートタイム労働法及び労働者派遣法の一括改正等を検討し、関連法案を国会に提出する。」としています。以下、同プランの一文を引用します。

「女性や若者などの多様で柔軟な働き方の選択を広げるためには、我が国の労働者の約4割を占める非正規雇用労働者の待遇改善は、待ったなしの重要課題である。我が国の非正規雇用労働者については、例えば、女性では、結婚・子育てなどもあり、30代半ば以降、自ら非正規雇用を選択している人が多いことが労働力調査から確認できるほか、パートタイム労働者の賃金水準は、欧州諸国においては正規労働者に比べ2割低い状況であるが、我が国では4割低くなっている。再チャレンジ可能な社会をつくるためにも、正規か、非正規かといった雇用の形態にかかわらない均等・均衡待遇を確保する。そして、同一労働同一賃金の実現に踏み込む。
同一労働同一賃金の実現に向けて、我が国の雇用慣行には十分に留意しつつ、躊躇なく法改正の準備を進める。労働契約法、パートタイム労働法、労働者派遣法の的確な運用を図るため、どのような待遇差が合理的であるかまたは不合理であるかを事例等で示すガイドラインを策定する。できない理由はいくらでも挙げることができる。大切なことは、どうやったら実現できるかであり、ここに意識を集中する。非正規という言葉を無くす決意で臨む。」