弁護士からのメッセージ 人質司法をなくそう

「人質司法」をご存じですか?

「人質司法」という言葉を聞かれたことがありますか。警察に一度逮捕されたら、軽罪であっても、犯行を否認する限りは、釈放もされず、保釈もされないという司法の現実を指している言葉です。

身柄釈放が原則ですが、現実は・・・

刑事司法では、判決があるまで無罪を推定されるのが大原則ですから、本来は逮捕されてもすぐ身柄を釈放されるのが原則ですが、現実はそうなっていません。

裁判所が、被疑者を勾留する決定を出すためには、「住居不定」、「罪証隠滅の恐れを疑うに足る相当の理由」、「逃亡の恐れを疑うに足る相当な理由」の何れかがなければなりません。初犯のまっとうな市民であれば、簡単には勾留は認められなさそうに思えるかもしれません。しかし、検事が「罪証隠滅のおそれ有り」「逃亡のおそれ有り」として、勾留請求してくると、裁判所は「検事さんがそう言うならば、そういう事実があるんでしょう。」と、簡単に勾留決定してしまうのです。

私が弁護を経験したケース

しかし、刑事訴訟法の原則に立ち返って、勾留を争うべき時は争うべきです。

私の弁護経験でもこういう事件がありました。その方は、婦人警官から駐車違反をとがめられたのですが、ごく短時間の車を離れただけであったため、納得できず、婦人警官の制止を振り切って車を発進させたところ、婦人警官が車にあたって全治2週間程度のけがをしたとして、公務執行妨害で逮捕されたという事案でした。

この場合、証拠隠滅の恐れはありません。民間人が婦人警官を脅して口封じをするなんてことは考えられませんよね。またその人は、初犯で、独身でしたが、自宅を所有し、現在の勤務先にも1年半勤めています。初犯で相手のけがが全治2週間なら裁判でも当然執行猶予になるケースです。にもかかわらず、持家を捨て、仕事も捨てて逃亡するでしょうか。

しかし、検察は勾留請求しました。そのため、私は勾留請求が出た時点ですぐに裁判官に面接を申し込み、実情を訴え勾留請求を却下してもらいました。もっとも、裁判官は、面接の際、罪証隠滅の可能性は否定したものの、信じられないことに「独身だし、まだ勤続1年半だから、これは逃げますよ。」と言って、なかなか勾留請求の棄却に応じてくれませんでした。

1日でも早く保釈請求を

勾留されても、初犯で、常習性がなく、執行猶予が予想されるような事件であれば、起訴後は、保釈請求をすれば保釈が認められることが多いです。

保証金として200万円前後を積む必要がありますが、本人が裁判を逃れるため逃亡するようなことがない限り、保証金は返ってきます。1日も早く保釈されるようにするには、起訴前から弁護士に依頼し、起訴後すぐに保釈請求することが必要です。

当事務所では原則、起訴当日には保釈申請をし、その翌日には保釈許可決定を得るようにしています。

厳しい選択を迫られる否認事件

ところで、否認事件では難しい選択に迫られます。たとえば、あなたがおかした犯罪が、せいぜい罰金で終わる程度の内容のものだとします。その場合、やっていなくても、「やった」と自白すれば「罪証隠滅のおそれ無し」として、釈放されますが、「やっていない」と犯行を否認すれば、「罪証隠滅のおそれ有り」として、最長23日間の留置所暮らしが待っています。

会社員が23日間も勾留されれば、勤務先にも知られ、最悪の場合免職になってしまう可能性もあります。ですから、やってもいないのにやったと認めて罰金を払わざるを得ない立場に追い込まれることが多いのです。これは、弁護士としても非常に苦しむ場面です。弁護士と慎重に相談して悔いのない選択をしてください。

弁護士紹介

法律事務所ホームワン 代表弁護士山田冬樹

経歴

1959年   東京都出身
1985年   早稲田大学法学部卒業
1987年   弁護士登録(東京弁護士会所属)

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